大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

青森地方裁判所 昭和32年(行)13号 判決

原告 片桐克之 外一九名

被告 青森市

主文

原告等の請求を棄却する。

訴訟費用は原告等の連帯負担とする。

事実

原告等訴訟代理人は「被告が原告等に対し昭和三十二年十月二日青市土第五八八号を以てなした別紙図面表示の(ロ)、(ニ)所在の屋台を除却して道路を原状に復することを命ずる旨の処分は無効であることを確認する。被告は原告片桐克之、同保坂保、同富尾操、同塩田好令、同工藤キセ、同渡辺チヨノ、同佐藤文蔵、同岡本兼雄、同木沢一夫、同坂本義一、同工藤芳郎、同柳杭田やえ、同伊香定雄、同三井巧に対し各金四万七千円、同桜庭鉄男、同仁岸智恵、同太田たか、同工藤キヨ、同坂田きぬ、同林彰元に対し各金一万一千円及びこれに対する昭和三十三年一月二十八日以降完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は被告の負担とする」との判決を求め、その請求原因として

一、原告林、同坂田、同仁岸、同太田、同保坂、同工藤きよ子、同塩田、同三井、同片桐、同富尾、訴外三上健一はもと青森市通称新興街に面する別紙図面表示の(イ)の部分を、その余の原告等は同図面表示の(ハ)の部分を各一、五坪から三坪の範囲で区分し他人から借地して店舖を構え衣類、小間物、雑貨、履物、果物の販売、物品修理業等を営んでいたところ、被告は昭和三十二年四月三十日までに原告等及び三上をして右土地から店舖を撤去させ、その替地として同年五月十五日原告等及び三上に同図面表示の(ロ)、(ニ)の場所を図示のとおりの配置により一人あたり〇、六七坪を屋台設置のための道路占用面積とし、占用料は一坪分を払うこと(したがつて前記〇、六七坪は一応の定めであつて一坪までは使用し得る約)設置すべき屋台の構造は日没と共に撤去し得る組立式屋台として期間は二ケ月とするがその満了毎に出願すれば二ケ月宛更新して再許可するという条件で道路占用の許可を与えた。

二、右許可に基き原告等及び三上は屋台を設置して道路を占用し昭和三十二年七月十五日期間満了に伴い以後同年七月十六日から同年九月十五日まで、更に同年九月十六日から同年十一月三十日まで各更新許可を受けた(但し三上は同年九月十六日以降無許可である)

三、然るに被告は原告等に対し同年九月三十日青市土第五七七号を以て原告等が道路占用許可の条件に違背しているものとして道路法第七十一条第一項第二号により許可を取り消す旨通告し、更に同年十月二日青市土第五八八号を以て右屋台を除却し速かに道路を原状に復することを命ずる(以下除却命令と称する)旨通告した。

四、しかし右取消及び除却命令は次に述べる理由で無効のものである。即ち

(一)  被告は原告等の屋台の構造が許可当初のものと異ることを以て許可条件に反するものとなすものの如くであるが、原告等は右昭和三十二年九月十六日以降同年十一月三十日までの更新許可出願にあたり、従来の組立式屋台では材料の損耗により風雨に耐えないのでその構造を「組立級店舖」即ち作りつけ屋台に変更しその占用面積を〇、九六坪としたい旨願い出で、被告からその旨変更許可を得て作りつけ屋台に改造し、同年九月二十四日右改造の状況につき被告市係員の調査を受けている次第であつて、原告等には何等条件違反のかどはない。しかるに被告は前記の如く昭和三十二年九月十六日以降は無許可で道路を占用している三上に対し何等の措置を講ずることもなく放任しながら、何等違背のない原告等に対し右許可を取消したのは著しく違法であり、右取消は無効である。

(二)  のみならず道路法第七十一条によれば右のような許可の取消をしようとする場合、物件の除却命令を発する場合のいずれについても、当該処分の相手方に対し、あらかじめ聴聞を行わなければならないと解すべきところ、被告はいずれの処分についても聴聞を行わないのであるからこの点からしても右処分は無効である。

(三)  更に右取消は取消権者である被告の原告等に対する告知によりはじめて効力を生ずるものであるが、原告等に対する取消の告知は被告市において末だ取消処分の意思決定をなさないのに拘らず被告市の吏員が勝手に取消の通知をしたものであることは、右取消処分が昭和三十二年九月三十日に市長の決裁になつているのに早くも同日朝原告等に対し郵便により取消の告知のあつた事実に徴し明かである。したがつて取消処分は未だ原告等に正当に告知されていないから無効であり、かかる無効の取消処分を前提とした前記除却命令も亦当然無効である。

(四)  青森市内には他に被告の許可を得ないで屋台を設置し道路を占用しているものが四百軒近く存在しているにも拘らず被告はこれらに対しては全く放任しながら、却つて正式に許可を得て占用している原告等に対してその許可の取消し、屋台の除却を命じた処分は権力の乱用であるから無効である。

五、しかして原告等は被告から右占用許可取消に次ぐ除却命令の強制により止むなく昭和三十三年一月二十七日各自の屋台を撤去したが、この撤去により各自右屋台の価額金一万一千円に相当する損害を蒙つたのみならずさらに原告桜庭、同仁岸、同太田、同工藤きよ子、同坂田、同林を除くその余の原告等は右撤去に伴い新に青森市内新興映画劇場の軒先にある一区劃一坪余の店舖を借り受け各自その権利金三万六千円を支払うという損害を蒙つた。これ等の損害はすべて被告の故意もしくは過失による前記無効行政処分に由来するものというべきである。

六、そこで原告等は前記除却命令の無効確認を求めると共に被告に対し前記処分により蒙つた損害の賠償として原告桜庭、同仁岸、同太田、同工藤きよ子、同坂田、同林等は各金一万一千円、その余の原告等は各金四万七千円及びこれに対する損害発生の日以後の昭和三十三年一月十八日以降右金員完済に至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求めるため本訴に及んだ。

と述べた。

(立証省略)

被告訴訟代理人は主文同旨の判決を求め、答弁として

原告等主張の一、の事実中、原告等がその主張の如く別紙図面表示の(イ)、(ハ)の部分を使用しその主張の店舖を所有して各営業をしていたこと、昭和三十二年四月三十日までに原告等が右店舖を撤去したこと、同年五月十五日被告が原告等にその主張の如く同図面表示の(ロ)、(ニ)の場所を図示の配置により各〇、六七坪宛を屋台設置のための占用面積とし、但し占用料は一坪分を支払うこととし、屋台の構造は日没と共に撤去し得る組立式屋台とし、期間は二ケ月として道路占用許可を与えたことは認めるが、その余は否認する。原告等がもと使用していた右(イ)、(ハ)の部分は被告が青森県から委任を受けて管理していた道路であつて原告等は訴外人多数と共にこれを不法に占用して店舖を開いていたのであつて、青森県、青森警察署長、青森市消防長、被告等の勧告に応じて任意にこれを撤去したのであり、右撤去をした者のうち差当り立退先のない原告等の事情を酌量し、被告は特に暫定的措置として最終期限を昭和三十二年十一月中旬までとし、その間二ケ月宛出願により更新許可を与える、期間満了の場合若しくは許可を取消された場合は直ちに道路を原状に回復し検査を受ける、その他原告等主張どうりの条件で前記(ロ)、(ニ)の場所の道路占用を許可したものであり、原告等主張の如くこれを替地として許可したのではなく、又願出さえあれば永久に更新することを承認したものでもない。又「占用料一坪分を支払う」というのは原告等主張の如く一坪まで使用を認めた趣旨ではなく、右は青森市道路占用料徴収条例第四条により一坪に満たない端数を切上げて一坪分の料金を徴することとしたにすぎない。

二、三の事実は認める。

四、の(一)の事実中、原告等主張の道路占用願に「占用方法」として「組立級店舖」と記載されていたこと、原告等が屋台の坪数を大きくし作りつけのものに改造したこと、昭和三十二年九月二十四日被告市の吏員が原告等の屋台改造状況を調査したこと、三上健一に対し取消処分をしなかつたことは認めるが、その余の事実は否認する被告は原告等主張の変更を承諾したことはない。即ち組立級店舖とは従来どうりの組立式屋台の趣旨であり、被告市吏員が改造状況を調査したのはその頃原告等の許可条件違反の事実を確認するために行つたものである。又三上健一に対しては昭和三十二年九月十六日更新許可そのものを与えなかつたので取消をする必要がなかつたにすぎない。(二)の事実は否認する。被告は原告等が許可に付した条件に違反して作りつけ屋台に改造した事実を確認したので道路法第七十一条により昭和三十二年九月二十八日原告等の聴聞を行つたうえで道路占用の許可を取り消し、次いで屋台の除却を命じたのであるから何等違法はない。同条第三項は右のような場合除却命令を発するためにも重ねて聴聞を行わなければならない旨を定めたものではない。(三)の事実中、取消の告知が原告等主張の日時に到達した郵便によつてなされたことは認めるが、その余の事実は否認する。右通知を発した当時においてはすでに適法に取消の意思決定をしていたのである。(四)の事実中、原告等主張の如く青森市内に他に無許可で道路を占用して屋台を開いている者が四百軒近く存在していることは認めるが、それだからというて直ちに右取消が権限乱用となるものではない。

五、の事実中、原告等がその主張の日に屋台を撤去したことは認めるが、その主張の損害を蒙つたことは不知、その余は争う。

以上被告のなした許可取消処分及び屋台除却命令は正当であるから原告等の請求は失当であるが、仮りに原告等が主張する如く原告等に条件違反がなく、又被告が聴聞を行わないで取消処分をし、除却命令を発した違法があり、右は無効であるとしても

(一)  本件道路占用許可はもともと昭和三十二年九月十六日以降同年十一月三十日までの期間であるから、既に右期間が満了しているのみならず、右屋台は既に昭和三十三年一月二十七日撤去されているので現在右除却命令の無効確認を求める訴の利益は存在しない。

(二)  又仮りに原告等がその主張の如く右撤去により損害を蒙つたとしても、原告等はもともと占用期間満了と共に前記許可の条件により原状回復義務を有していたのであるからその後右期間満了後に屋台を撤去したことに因る損害を被告のなした前記処分に因るものと称してその賠償を求めるのは失当である。

と述べた。

(立証省略)

理由

一、原告等が青森市通称新興街に面する別紙図面表示の(イ)、(ハ)の附近に店舖を有しその主張の各営業を営んでいたところ、昭和三十二年四月三十日までに右店舖を撤去し、被告が同年五月十五日原告等に対し別紙図面表示の(ロ)、(ニ)の場所を同図示の配置により屋台設置のために、〇、六七坪を占用面積とし、占用料は一坪分を支払うものとし屋台の構造は日没と共に撤去し得る組立式屋台として期間は二ケ月とする条件で道路占用許可を与えたことは当事者間に争がない。

しかして、原告等が右のように従前の店舖を撤去して新に被告から道路占用の許可を得るに至つた経緯は右当事者間に争のない事実と証人阿部貞雄の証言により真正に成立したと認められる乙第一号証、その方式及び趣旨により真正に成立したと認められる乙第五号証の三、成立に争のない甲第二号証の一乃至十、乙第二号証の一、二、証人七戸惣治郎、同佐藤浅吉、同五十嵐正一、同橘友策の各証言、原告片桐克之本人の供述を綜合すれば、原告等がもと店舖を有していた前記の場所は青森県が青森市特別都市計画土地区画整理の施行により市道(別紙図面表示新興街通り)拡幅予定地に編入し、被告が青森県から委任を受けて右市道と共に管理していたのであるが、界隈には原告等をはじめ五十五名の者が店を出し県当局からも再三移転を命じたがこれに応じなかつたこと、しかし同所に右店舖が存在することは都市計画事業の遂行、道路交通の取締、消防活動等諸般の見地からもはや放置することを許されない情勢となつたので右各当局からの一致した要請によりついに任意これを撤去するに至つたこと、しかし右のうち原告等は早急に他に移転先を見出すことが困難で早速生活にも困窮するとの陳情があつたので、被告はその事情をしん酌し特に暫定的措置として期間を二ケ月とした前記道路占用の許可を与えることとし、もつとも期間満了後は出願により更に二ケ月更新許可を与えるが最終的には昭和三十二年十一月中旬までで打切ることにし、期間満了の場合若しくは許可を取消された場合は原告等は直ちに屋台を除却して道路を原状に回復することの条件を付したものであることが認められ、原告工藤芳郎の供述中右認定と異る部分は信用しない。

なお原告等は占用料一坪分を支払うことにしたので一坪まで占用し得る約であつたと主張するが、右は被告主張の市条例の規定により一坪未満は一坪に切上げて徴収することとなつていることによるものであることが認められる。

二、しかして右許可に基き原告等は屋台を設置して道路を占用し昭和三十二年七月十五日期間満了により翌十六日以降同年九月十五日まで被告から更新占用許可を得、更に右期間満了に伴い翌十六日以降同年十一月三十日まで右許可を受けたこと、然るに被告が同年九月三十日原告等に対し青市土第五七七号を以て原告等が道路占用許可の条件に違背しているものとして道路法第七十一条第一項第二号により許可を取り消す旨通告し、更に同年十月二日青市土第五八八号を以て右の如く許可を取消したのに拘らず未だに屋台を除却していないが速かにこれを除却して道路を原状に復することを命ずる(除却命令)旨通告したことは当事者間に争がない。

三、原告等は被告の右取消及び除却命令は無効であると主張するので以下順次これを検討する

(一)  原告等は被告主張のような許可条件の違反の所為がないというのであるが、原告等が昭和三十二年九月十六日以降同年十一月三十日までの占用許可を受けた後屋台の坪数を大きくし且つ従来の組立式のものから作りつけのものに改造したことは当事者間に争がないところ、原告等は右期間の占用許可出願にあたり、組立式屋台の構造を「組立級店舖」即ち作りつけ屋台に変更しその占用面積を〇、九六坪に拡張したい旨願出て、被告からその変更許可を得た旨主張するので考えるに、原告が右出願にあたり「組立級店舖」と記載して願出たことは当事者間に争のないところであるが、「組立級店舖」なる文言が固定的建造物を意味すること及び原告等が被告からその変更許可を得たとの点についてはその主張にそう原告片桐克之、同工藤芳雄各本人訊問の結果は措信しがたく、他にこれを認めるに足りる証拠はない。却つて証人阿部貞雄、同七戸惣治郎、同佐藤浅吉の各証言を綜合すれば、「組立式屋台」と「組立級店舖」とはその意味が異るものでなく同じ内容のものであること、被告市においては昭和三十二年九月十六日以降についても従前と全く同じ条件で許可したものであること、原告等が前記の如く改造をした頃被告市の吏員が原告等の屋台の調査を行なつたことがあるけれどもその目的とするところは原告等に条件違反の事実の存否を確認するにあり、原告等主張のような目的で調査したのではないことが認められる。尤も原本の存在並に成立に争のない甲第一号証、同第三号証、及び同第五号証によれば、原告等が昭和三十二年九月十六日以降につき許可を願出た書面には従前のそれと異り占用方法欄に屋台を日没と共に撤去するとの趣旨を現す「日没撤去」の文言が記載されていないことが認められるけれども、前記七戸証人の証言により、右はたまたま書きもらしたにすぎないものと認められるからなんら前の認定の妨げとなるものではない。又成立に争のない甲第九号証の一乃至二十によれば、原告等は右改造後の昭和三十二年九月三十日までの占用料を被告に納付したことが認められるけれども、右は証人阿部貞雄、同佐藤浅吉、同七戸惣治郎の各証言を綜合すれば原告等の改造を承認する趣旨で被告がその占用料を収納したのではないことが認められる。しからば原告等は占用許可条件に違反して屋台を改造したものというべきであるから被告が道路法第七十一条に基き原告等に対し占用許可処分の取消をしたのは違法ではなく原告等のこの点に関する主張は理由がない。

(二)  原告等は被告が右取消をするについては道路法第七十一条に定める聴聞を行わなければならないのにこれを行わなかつたと主張するが、証人佐藤浅吉の証言により真正に成立したと認められる乙第四号証の三、同七戸惣治郎の証言により真正に成立したと認められる乙第四号証の五、成立に争のない乙第三号証の一乃至三、乙第四号証の一、二、四、証人佐藤浅吉、同七戸惣治郎、同阿部貞雄の各証言を綜合すれば、右取消をする前の昭和三十二年九月二十八日右法条に基く聴聞をしたことが認められ、右認定に反する原告片桐克之、同工藤芳郎各本人訊問の結果は措信しがたく、他には右認定を覆えすに足りる証拠はない。被告は前記のとおり昭和三十二年九月三十日原告等に対し道路占用の許可を取消したうえ、同年十月二日右道路から屋台を除却して原状に回復すべきことを命じたのであるが、原告等は右除却命令のためにも改めて聴聞を要するもののように主張するけれども、右許可の取消処分及び屋台除却命令は結局において原告等の許可条件の違反を理由として原告等に対し道路占用の許可を与えた以前の原状に復せしめるという一連の処分なのであるから、これを行う前に予め聴聞してその意見弁解を聴いている以上、個々の処分毎にこれを繰返さなければならぬものと解することはできない。この点に関する原告等の主張も亦理由がない。

(三)  原告等は右取消処分の告知は被告がなしたのではなく被告市の吏員が未だ被告が取消の内部的意思決定をしないうちに勝手になしたので無効であると主張するが、当事者間に争のない右取消処分が原告等に対し昭和三十二年九月二十日朝郵便により告知された事実と証人阿部貞雄の証言により真正に成立したと認められる乙第五号証の二より認められる右取消処分が被告市長によつて書類上決裁されたのが右と同じ日である事実とによるも、原告等はいずれも青森市内に居住するものであることを考え併せるときは、決裁後右のように速かに告知することも不可能でないから原告等の右主張は理由がない。

(四)  右取消処分当時青森市内には原告等主張のとおり無許可で道路上に屋台を設置していたもの約四百軒が存在していたことは当事者間に争のないことであるが、それだからといつて直ちに原告等に対する取消が権限乱用であると認めるべき証拠はない。原告等のこの点に関する主張も理由がない。

四、そうすると被告が原告等に対し本件占用許可を取消し、更に屋台の除却命令を発したことは正当であるというべきである。

のみならず本件無効確認の訴は被告の前記除却命令の執行を阻止するために提起されたものであることは弁論の全趣旨により明かであるところ、原告等が本件訴訟の進行中の昭和三十三年一月二十七日右屋台を撤去したことは当事者間に争のないところである。してみると原告等はもはや本件除却命令の無効確認を求める利益がないものというべきであるから右無効確認の請求はいずれの点からしても棄却を免れない。

又被告の前記取消処分及び除却命令の無効を前提としてこれに基因して損害を蒙つたとなし、その賠償を求める請求はその前提が誤つているばかりでなく、原告等の得た道路占用許可の終期は前記の如く昭和三十二年十一月三十日であるから仮りに被告の前記許可取消処分がなくとも期日以後は道路を占用し得る権利がなく、屋台を除却して道路を原状に回復する義務があるのである(道路法第四十条)。されば右期日後である昭和三十三年一月二十七日になつて漸く屋台を除却しながら、これに伴い生じた損害を目して被告の許可取消処分ないしは前記除却命令により生じたものということはできない。それ故原告等の損害賠償の請求も亦失当であること明らかであるから棄却すべきである。

そこで訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条、第九十三条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判官 飯沢源助 福田健次 中園勝人)

(別紙省略)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例